エッセイ【ところざわサクラタウン編】お天道様は見ている

2023年3月31日金曜日

エッセイ【瞳のシャッター 心のフィルム】

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  旅行会社に限った話じゃなく、接客業やサービス業の多くは、営業時間が終わってからが業務の本番ではないだろうか。


 その日受けた申し込みをまとめたり、昼間不在のお客様に電話をしたり。


「その日の仕事はその日のうちに」

 明日に回せば明日はまた、違う仕事が積み上がる。


 だから外食は、前日以前に誘っておいてくれなければ、基本的には残業が前提。


 定時から二時間たって会社を出て、勝手に待ち伏せしていた彼氏に激怒されても、こちらは「知らないわよ!」と言いたくなってしまう。


 どだいサプライズなんてものは、相手の都合を考えない自己満足の象徴だろうに。




 多分それだけが原因ではなかったと思うが、その後しばらくして彼氏と別れた私は、ふとネットで見た「好きな物語に、泊まる。」がコンセプトのホテルに興味を惹かれた。


 EJアニメホテル。

 こうなれば〝推し〟に癒して貰おう。

 二次元に走る夜があったって良いじゃないか。



 そのうえ期間限定で、私がリスペクトしている市川崑監督版「犬神家の一族」へのオマージュで、水面に突き出した足が角川武蔵野ミュージアムの水場に出現しているとの記事を見たのも、理由としては大きかった。


 だからある日、私は休日を「ところざわサクラタウン」で過ごそうと決めたのだ。





 正直、青空の下で見た、水面から出ている「足」はなかなかにシュールで、ある意味感動した。


 脳内で元カレに置き換えていた――かどうかは、永遠に口を噤んでおく。



 敷地内には建築家隈研吾氏が手掛けたと言う新しい神社もあり、正式名称「武蔵野坐令和神社(むさしのにますうるわしきやまとのみやしろ)」は、神社の姿かたちと絶妙に調和していて、荒んだ心がちょっと洗われた。


 水面から出ていた「足」を見て物騒なことを考えたなんて、きれいさっぱり忘れよう。

 何となく私は神社に向かって頭を下げた。

 きっとお天道様は見ている。



 更に同じ敷地内にはところざわサクラタウンのランドマーク的存在でもある「角川武蔵野ミュージアム」があって、図書館・美術館・博物館それぞれの良さを全て詰め込んだ、贅沢な空間が中には広がっていた。


 蔵書や展示物、開かれているイベントなどから察するに、とても一日で満足できそうにない、複合型の施設だ。


 カフェ、コンビニ、アンテナショップに似たコンセプトの「埼玉パーク」と、ホテルの部屋に持ち込んでひとり宴会をする材料にだって、事欠かない。



 仕事帰りに武蔵野線に揺られて行ったことを、この日は少し後悔していた。


 次からはちゃんと、2日間休みを確保してから行くことにしよう。

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